第16回ソーシャルイノベーションセミナーを開催しました!  

 8月21日(日)ソーシャルイノベーションセミナーを開催しました。第16回となる今回は、「がんになってもその人らしく生活できる伴走支援のある地域づくり」に取り組む、株式会社PEER・代表取締役社長/佐藤真琴さんにご登壇頂きました。  統計によると、日本では2人に一人が生涯で一度はガンにかかると言われています。さらに近年のがん医療の進歩により生存率が改善され、通院治療環境の整備も相まって、地域社会で暮らしながら、仕事をしながら通院する患者さんが30万人を超えると言われています。そんな中で、佐藤さんの、がン患者さんの「外見と気持ち」を支えるアプローチはとても重要な役割を担っています。 IMG_6163 気になったら行動してみる、とても軽やかな女性の佐藤さんは、脱毛の副作用が患者さんの生きる尊厳にどれだけ影響を与えているのか体感するため坊主になったり、ウィッグが高額で気軽に利用できないと知ると、アポなしで中国のウィッグ工場に行き5万円のウィッグをつくったり・・・。その行動力の源泉は、「がん患者さんにその人らしく自信を持って生きて欲しい」との思いです。生きているからいいだろう・・・もしかしたら周囲の人々は、命に関わらない副作用の辛さには気が回らないのかもしれません。坊主になった佐藤さんは、それが大きな誤解であることを知っています。今年8月初旬に発行された「がん患者に対するアピアランスの手引き(国立がん研究センター/金原出版)」の冒頭には、以下のように記載されています。

 日常整容行為は、治療前から行っていた行為であり、本来的に、個人の嗜好や経験を反映するもである。すなわち、その人らしさの表現であり、個人の尊厳に結び付くものであるため、十分に尊重されなければならず、がん治療中といえども、身体に異常が現れない限り制限される合理的な理由はない。

   最期までその人らしい姿で生きた方のご遺族は、大切な人の死による悲しみを受入れ前に進むこと(グリーフケア)が比較的スムーズなのだそうです。外見と気持ちは密接に関わり患者さん本人だけでなく ご家族もケアするのですね。

IMG_6161 入院治療を終え、家、地域に戻る患者さんが次に直面するのは、治療や日常生活における情報の氾濫です。玉石混交の情報過多の中、がんという病を前に冷静な判断を下せる精神状態ではなく、患者さまはその一歩を踏み出すことができないでいるのです。その方に必要な情報を取捨選択し、歩をすすめる意思決定を支援すること、これは医療の専門職にしかできないことです。「専門職だからこそ患者さんの心を支えられる」と佐藤さんは教えてくれました。医療人として、または当事者の家族として、がん患者さんに関わる方はこれからもっと増えていくでしょう。そんな時、皆さんには、ぜひ想像力を持ってその方の「困りごと」に向き合ってほしいと思います。

■講師プロフィール: 株式会社PEER・代表取締役社長/佐藤真琴さん 1977年、静岡県浜松市生まれ。 米国留学、大手企業勤務の後、看護師を志す。がん患者の抱える「医療だけでは解決できない課題」に気付き、2003年浜松で起業。医療現場と連携しながら手頃な価格で手に入るウィッグ(かつら)を提供しながら、がん患者が治療中も普通に日常生活が送れるようにその方の容姿に合ったウィッグや帽子、病状、体調に応じたスキンケア、肌着の日用品やケアグッズなどの企画販売を行うとともに、ウィッグや自毛の手入れを行う個室美容室を運営。現在、直営店、提携店は全国に30店舗。コンビニの感覚で使ってもらえる場所+患者さんの拠り所づくりの拠点「ウェルショップ」を5月にオープンさせたばかり。 ■受賞歴:2009年日経ウーマン/ウーマンオブザイヤ―キャリアクリエイト部門・第5位、経産省ソーシャルビジネス55選、2014年内閣府女性のチャレンジ賞  など多数