第20回ソーシャルイノベーションセミナーを開催しました!  

 日本では、15歳から39歳までの死因の第一位が自殺であり、かつ先進7カ国において自殺死亡率が群を抜いて高いことから、若者の自殺は依然として深刻な状況が続いています。その理由の1つとして、自殺リスク(希死念慮)のある若者が友人や周囲の大人、支援センターなどの公的機関などに悩みを打ち明けることができにくい環境であることが挙げられます。伊藤さんは、インターネットの検索機能活用により、自殺ハイリスクの若者にリ―チし、悩みの開示や具体的な支援への橋渡しを行うなど、世界的に前例のない若者支援を行っています。
 今回は若者自殺予防」いう非常に重いテーマでしたが、講師の伊藤次郎さん(NPO法人OVA代表理事)が、丁寧に「課題への危機意識」と「我々大人がどのように関わるべきか」を教えくださり、ご参加頂いた皆さんも真剣に聴き入っていらっしゃいました。

 周囲に相談できずSNSに「死にたい」と書き込んだりネット検索する若者たち。「死にたい」とのつぶやきは「助けて」という心の叫びである。実際に多くの方に寄り添いカウンセリングを行ってきた伊藤さんが語る言葉は、とても重かったです。伊藤さんの活動は、インターネット広告の仕組みを利用し、「死にたい」「自殺」などのワード検索をした場合に特設サイトが表示され、メールやチャットを使って悩みを打ち明けられる体制をつくりました。電話よりもメール、メールよりもチャットと、若者のコミュニケーションツールが変化する中、死にたいほど悩む若者へのアウトリーチ方法も、変化させなければ彼らと繋がることができない、と考えたのだそうです。「死にたい」と検索した約3%の若者が、メールで悩みを送信してきて、さらにその約1%が対面での相談にこぎつけるとのこと。

 「死にたい」と考えるほど「生きづらさ」を抱えてしまう背景はとても複雑で、学校や職場での人間関係、いじめ、貧困、虐待、ひきこもり、LGBT…などが複雑に絡み合っています。我々にできることは、気づき、かかわり、つなぐこと。深刻な悩みや死にたい気持ちを打ち明けられたら、ますはその気持ちを吐き出させ、受け止めること。決してはぐらかしたり、意見を押し付けたりしないこと、が大切なのだそうです。その方の抱えている悩みを整理することができたら、しかるべき窓口を紹介したり、まだその方自身でアクションを起こす勇気がでないのであれば代わりにつないであげる、そうする人が増えたら自殺に至るケースが減らせるかもしれない。
 しかし、悩みを打ち明けられる人、助けを求められる人ばかりではありません。弱音を吐いてはいけないという風潮や、楽しい話題しか共有できない環境が、ますます彼らを追い込みます。誰しもが「助けて」と言える社会を作ること。これが最も大事なことなのだと、伊藤さんはおっしゃいました。まずは、我々自身の周囲からそんな環境を作っていきたいですね。

 また、心の病気を患い精神科、心療内科などを受診した方の中にも、自殺リスクを抱えた方がいらっしゃいます。つらい気持ちを紛らわそうと、精神的な依存から過量服用をし、その影響で衝動的に自殺される方も少なくありません。 医療者の中でも特に薬剤師は、患者さんの服薬状況から過量服用のリスクに気付きやすい立場にいます。また、薬剤師は患者さんにとって身近な相談相手になり得ます。病気を治すための薬剤が、自殺を後押しすることがないよう、悲しい選択をさせないよう、薬局にもできることが沢山あることが分かりました。

伊藤さん、ご参加頂いた皆さん、ありがとうございました!