第17回ソーシャルイノベーションセミナーを開催しました!  

 11月17日(木)に、”世界一明るい視覚障がい者”成澤俊輔さんを講師にお招きし「第17回ソーシャルイノベーションセミナー」を開催しました。

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 成澤さんは、3歳のときに、網膜色素変性症という視覚を徐々に失う難病にかかり、今はわずかな光しか感じることができないほぼ失明の状態です。目の病気を抱えながらも大学時代に経営コンサルタントとして活躍した経験から、現在はNPO法人FDAの理事長として、知的障がい、身体障害だけではなく、引きこもりや適応障がいやうつ病などの精神障がいを持つ方々に就労に至るまでのトレーニング環境の提供を行う傍ら、町のお魚屋さんから大企業まで、多様な企業の障がい者雇用のコンサルティングを行っていらっしゃいます。

 講演の冒頭では、参加者に障がい者雇用を体感してほしいということで、5名1チームとなり、紙で塔を作るゲームを行いました。ゲームは3回。1回目は何のル―ルも決めずに、紙を折ってひたすら高く積んでいきました。

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ここでは、みんなでワイワイと紙の折り方と積み方を相談していました。2回目は、チームの中で1名だけアイマスクで目隠しをし、アイマスクをした人だけが紙を積むというルールだけがあるだけ。2回目では、チームメイトが紙をおったり、声をかけたりしながら、カオスのような状態で紙が積まれていきました。成澤さん曰く、2回目の状態は、当事者の意思は無視して周りの都合だけで進められていく障がい者雇用を現しているものだとのこと。確かにそうです。だから3回目は、まず何段積もうか・・・とアイマスクをしたメンバーの考えを聞きながら話を進め、そして、積み方の支持の仕方も、右左がよいか?時計の針の位置を使ったやり方がよいか?など、コミュニケーションのルールを決めました。そして忘れてはいけないのが、必ず褒めてあげること。当事者の方は、常に自信がなく不安を抱えているので、褒めて自信をつけさえてあげることが大切なのだそう。

①目標は一緒に決める ②相手に合ったコミュニケーションをとる ③必ず褒めてあげる

 雇用をしたことで満足してしまい、当事者を置き去りにしてしまいがちな障がい者雇用のあり方への、成澤さんからの柔らかなアンチテーゼです。

 中学生の頃には、ソフトボール大程度の視野しかなくなり、スポーツやマンガ、ゲームといった遊びを通じて友達を作ることができなかった成澤さん。医療の現場では、この先の自分の人生がどうなるのかを教えてくれるかわりに、音声読み上げソフトなどの福祉機器を提案されるばかりで、先の自分を想像できない不安や悔しさ、「読み上げソフトがあってもメールを送る相手がいない」孤独を理解してもらえていないことに、苛立ちを覚えていたそうです。大学で学んだ学問としての福祉にも自分が探す答えはなく、ならばいっそ、自分が外の世界で活躍したほうが、みんなのためにもいいのではないか?それが学生ながらに経営コンサルタントを目指した理由。そこで出会った経営者の方々に頼られること、そして「経営者の孤独」と「障がい者の孤独」がとても似ていたことが、成澤さんの支えになりました。

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 障がいを持つ方々に、常に「僕らがいるから大丈夫だよ。」と声をかけ続ける成澤さん。それは、成澤さん自身が当事者として生きてきた中で味わった”悔しさ”や、周囲から受けた”愛情”によって培われた”覚悟”から発せられる言葉のように思います。

 やっぱり自分はダメなんだ…と自分自身を認めてあげることができない方にとって、成澤さんは「自分の活かし方」を見出してくれる最初の人。人には誰だって凸凹がある。でも凹と思うところだって、視点を変えれば凸になる。

 「障がい者」と「健常者」の境目ってあるのだろうか?もちろん、合理的配慮を必要とする方を守るために法的な定義は必要。だけど人間同士が触れ合う中で区別はしたくない。「活かし方」を見出すことや「何かできることはありますか?」と声をかけられることを必要としているのは、決して障がい者の方だけはないはず。成澤さんから、人と関わって生きるために、とても大切なことを教えて頂きました。成澤さん、ご参加頂いた皆さん、本当にありがとうございました!