第14回ソーシャルイノベーションセミナーを開催しました!  

 12月2日(水)ソーシャルイノベーションセミナーを開催しました。第14回となる今回は、「ホームレス状態を生み出さない日本を目指して」というテーマで、NPO法人Homedoor理事長の川口加奈さんにご登壇頂きました。

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 厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、この10年間でホームレスの数は約1/3に減少していることがわかります。しかし、実際は、小屋を持たず夜だけ路上に寝泊まりする人、ネットカフェやファストフード店での寝泊まりする人、日雇い仕事の寮に短期で寝泊まりする人など「見えないホームレスの人」が増え、ホームレス問題も複雑化し支援が難しい状況にあります。ホームレスになる根本の原因は実に多様で、発達障害やうつ病に罹患し会社や親から見放されてしまった人、リストラや派遣切りで仕事を失った人など、学歴もあり一流企業に勤めたいた方も沢山いらっしゃる。決して怠けていた人間の自業自得ではないのです。ほとんどの場合、失業をきっかけに家族、住居、健康、貯金などを徐々に失くした結果、居場所を失いホームレスになったケースで、一度ホームレスになると自力でその状態から脱出することはほぼ不可能です。

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 そんな状況において、ホームレスの就労支援や生活支援、ホームレスへの偏見や誤解をなくす啓発活動をしているのがNPO法人Homedoorの川口加奈さんです。川口さんは14才のとき、ホームレスは本当に自業自得なのか?という疑問を持ち、自ら炊き出しボランティアに参加。そこで出会ったホームレスのおっちゃん達の境遇を聞き、“ホームレス状態”は誰にでも起こり得ることなのだと知った時から川口さんの価値観は一変します。全校集会での演説、手作りの新聞作成、街歩きツアーなど、同世代の若者達に実態を知ってもらおう…と様々な活動を始めます。川口さんのさらなる転機は、ボランティア親善大使の日本代表として出会った他国代表の若者の一言から生まれました。「あなたはちょっといいことをしたいの?それとも社会を変えたいの?」その問いかけに自分の活動の甘さを痛感。それからは、「ホームレスから抜け出すため」「ホームレスに戻らないため」「ホームレスにならないため」入口と出口を水際で防ぐ仕組みづくりに奔走しました。

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 走り続けた10年間は決して順調なときばかりではなく、むしろ悔しい思いの連続だったのに、折れない強い心を持ち続けられたのは、「問題を知ってしまった者としての責任」を強く感じたからだとのこと。知る前の自分は周りと同じように偏見だらけで、自分もおっちゃん達を追い込む「原因」となっていたかもしれない、そんな罪悪感が強い使命感となったのです。看板事業の「HUBchari」は、外国人観光客や拠点近くのサラリーマンなどが利用してくれ、今では満員御礼の札止めの日もあるとのこと。でも川口さんの夢はここでおわりません。ホームレスになってしまいそうな、どうしようもない状態に陥った時、路上で生活しなくてすむためのセーフティーネットとなる施設、コミュニティを作ることが次の目標だそうです。これは15才頃からの夢だというのにも驚きました。なんて素晴らしい若者なのだろうと、私にとってはひたすら感動と自己反省の出会いでありました。今回セミナーにご参加頂けなかった方は、ぜひ一度Homedoorのホームページを覗いてみてください。きっと心がアツクなるはずです!

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■講師プロフィール: NPO法人Homedoor 理事長/川口加奈さん 14歳のときに参加したホームレスへの炊き出しをきっかけに、「ホームレス問題」に出会う。怠けているから、好きでやっている、自業自得…などの誤解から理解が進まない真の「ホームレス問題」を解決するため19歳で法人を設立。アルミ缶回収にから生まれた“自転車修理”というおっちゃん達共有の特技を活かしたシェアサイクルHUBchari事業や、使い捨てされるビニール傘の修理&販売(HUBgasa)、一時的な生活支援を行う施設(ホット&ハウス)の運営でホームレスの人や生活保護受給者累計140名以上に就労支援、300名以上に生活支援を提供する。世界経済会議(通称ダボス会議)のGlobal Shapersやウーマン・オブ・ザ・イヤ―2013若手リーダー部門にも選出される。大阪市立大学卒業。1991年大阪府高石市生まれの24歳。